家庭の状況によって子どもの体験活動に差が出る「体験格差」。この言葉が注目されたきっかけの一つは、公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」が2023年に公表した調査結果だった。あれから子どもの体験を巡る状況は変わったのか。代表理事の今井悠介さんに聞いた。
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――世帯年収300万円未満の家庭の子どものうち、3割が学校以外での体験活動をしていなかった。そんな調査結果が注目を集めました。
「やってみたい」と言うことすら避けるように
子どもが「やってみたい」と思っても、できない現実がある。そのことに社会が目を向けるようになったと思います。
私たちの調査では、月数千円かかるクラブ活動や夏祭りなどのイベントに参加できない子どもがたくさんいることがわかりました。そうした子はそのうち「やってみたい」と言うことすら避けるようになる。そんな状況を知り、子どもたちの思いに応えようとする動きが、民間でも公的機関でも広がっています。
――それに対し、お金がなくても体験はできるとか、他人の習い事に税金を使うのはちょっと、という声もあります。
体験という言葉でイメージするものがばらばらだからでしょう。それぐらい体験は軽視されてきたし、議論されてこなかった。子どもの希望をどこまでかなえるべきかは様々な意見があり、合意を作る必要があります。
たとえば以前は「大学なんて行かなくていいじゃない」という人が多かった。でも今では経済的に貧しくても大学に進む道筋が開けてきた。体験についてのとらえ方も変わっていくと思います。
子どもの体験活動が大人の消費活動に
子どもたちを取り巻く環境の…